学校教育とSDGs

2020年9月6日

北杜市に大学を!

八ヶ岳山麓に移り住んで20年余り。

風光明媚で水も空気も最高。周りの山々が台風や集中豪雨の直撃を防いでくれており、満足しきった日々を過ごしている。

こんな素晴らしい地域であるにも関わらず、人口は徐々に減少している。北杜市の場合、このまま推移すると、2040年には2000年比で人口は3割減、高齢化率は倍増して50%を超えると予測されている。

「いやあ、東京一極集中で、地方はどこでもそうですよ」と諦めきった声も聴かれるが、適切な対応をしていけば、この趨勢は変えることができる(と信じている)。

過疎先進県と言われた島根県では、いち早く若者世代を呼び込む地域魅力化政策に取り組んだ。その結果、若者世代の移住と高出生率で近々人口増に転ずると見込まれる町村が相当数になっている。

地域の特性に応じた適切な対応をすれば、いつまでも活力のある魅力的な地域であり続けるようにすることは可能である。

では、北杜市の場合の適切な対応とはいったい何だろうか?

その答えが「北杜市に大学を!」である。

「北杜市に大学を!」についての私の皮算用を問答形式にすると以下のようになる。

問「これからの学齢人口が減少する時代に、地方に大学を作って学生が集まるのですか?」

答「授業料を国立大学の半分以下の低学費大学にして、魅力的なカリキュラムを準備すれば学生は集まってきます。」

問「低学費でどうやって大学を運営できるのですか?」

答「大学の運営費用の3分の2は、人件費支出です。人件費を圧縮しなければ低学費にはできません。北杜市には元気の有り余っているインテリ・リタイア層が多数います。「超低年俸、ただし新たな生きがいを見つけることができますよ」とその人たちに再登板してもらえば、人件費は大幅に圧縮できます。また、半農半Xという若年層も多数いますが、その半Xの一つとして、大学運営にも協力してもらえればと思っています。もうひとつがMOOCs、つまり大規模無償オンライン講義の利用。MOOCsはアメリカで急増していますが、日本でもコロナ禍で大学の遠隔授業が急増しつつありますが、やがて質の高いMOOCsが利用可能になるはずです。人件費に次ぐ支出で大きいのが校地校舎ですが、自前の校地校舎を持たず、公共施設を徹底的に活用するようにします。」

問「魅力的なカリキュラムとは具体的にはどんなものですか?」

答「一言でいうと、徹底的にアクティブな、つまり受け身でない能動的な学びで構成されたカリキュラムです。詳しい説明は省略しますが、下の図に示したように、PBL、フィールドワーク、簡略版ABD(注参照)、MOOCsの4つを柱とし、問題解決能力と社会人基礎力と思慮深さを育みます。いずれにおいても「対話」を徹底させることで、学生は驚くほど成長していきます。問題解決能力と社会人基礎力と思慮深さを身に着けていれば、卒業後の就職も心配いりません。」

今日の大学の大部分は古い慣習や制度をひきずっている。73年も前にできた大学設置基準という規制でがんじがらめになってしまっている。その結果、学生に持続可能な社会の構築を担うべき力をつけることなく社会に送り出している。

未来の社会を先取りした、持続可能な社会の創り手を育む高等教育システムの確立は急務で、北杜市という地域の特性は、その成功事例を作るのに最適である。

課題解決能力養成に主力を置いた大学を設けることこそ、北杜市がいつまでも活力のある魅力的な地域であり続けるためにまず着手すべきことと確信している。

(注)ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)は、1冊の本を分断してグループのメンバーに割り当て、各人が自分の担当部分の要旨を発表し、その後対話を通して理解を深める短時間読書法。簡略版ABDは、さらなる時間短縮のために1冊の本そのものではなく、本の要約版を用いるもので、日本環境教育フォーラム主催の教員免許更新講習で実証実験済み。読書離れの著しい現代の学生が、先哲の様々な知恵に触れ、思慮深さや社会人基礎力を育む極めて有効な方法である。

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