学校教育とSDGs

2021年1月27日

『教育展望』2021年1・2月合併号

『教育展望』2021年1・2月合併号の新春座談会

一般財団法人教育調査研究所が発行している『教育展望』の2021年1・2月合併号が刊行されました。今回の合併号は全64ページのうち38ページ分が「新春座談会 WITHコロナ時代の教育の方向性」に当てられています。この座談会について「あとがき」で「教育の将来を見据えた大変深い議論が展開されています。新春号にふさわしいものであるかと思います。」と書かれていますが、決して編集者の「我田引水」ではない、本当に素晴らしい議論がなされています。

名古屋大学名誉教授の安彦忠彦氏、京都大学大学院教育学研究科准教授の石井英真氏、文科省初中局教育課程企画室長の板倉寛氏、そしてコーディネーター役の教育調査研究所の寺崎千秋氏の4人の座談会で、それぞれが率直に、今後の日本の学校教育の在り方に対する示唆に富んだ発言をしています。特に、石井英真氏の「分断」、「縦軸と横軸」「未来の学校」についての発言は、筆者の最近の関心事と重なる部分があり、深く納得しながら読み進めることができました。石井氏の発言を数か所抜粋し、以下に転記します。

・・現代の世界的な問題の一つが分断の進行です。(中略)検索サイトや通販サイトのように、ネット上で知らず知らずのうちに、個々人の嗜好に応じて情報がレコメンドされていますから、見えている世界が違ってきてしまっているのですね。(中略)信念の違いが依拠する情報リソースの違いを生み出していて、それをレコメンドシステムや個別のマッチングシステムが増強しているという、見えている現実の風景の分断をどんどん進めているというのが現状だと思います。(中略)社会全体の分断が進んでいきますし、先生方の中でも分断が進んで、世代間での分断、学校の中での教職員間の考え方の違いによる分断、さらには、階層間格差も反映しながら、類似の生活背景や価値観をもつ者が選択的に集うことによっても加速する、学校間の分断にもつながっていく。」(p.13-14)

すでに多くの人が意識していると思いますが、自分の検索した事柄に関連した広告や、検索事項に好都合な情報が次々と現れてくるネット社会が、学校教育においても「分断」を助長しているという指摘は、しっかりと受け止めて対応をする必要があります。

今まさに学校が社会的分断の装置となっていないか注意が必要です。社会的分断の装置としての学校ではなく、それを是正していく、逆に、社会的な統合とか信頼を積極的に作っていくこと、公共性を構築していくことを立脚点として、公教育、学校の制度設計をしていくのが大事ではないかと思います。

そういう観点でみたときに、「個別最適化」について、孤立化や個別分化に至るかどうかが重要です。(中略)「令和の日本型学校教育」の中でも「個別最適な学び」の関係で、「指導の個別化と学習の個性化」という対概念が用いられていますが、本質は、指導か学習かということではなく、縦軸か横軸かということなんです。縦軸方向で、個の多様性を伸長するという方向性で、横軸でスキルを伸ばしていく、あるいは速い遅いといった垂直的個人差でみていくか。そうではなく、横軸で、多様性を尊重するという発想で、水平的な価値観で、その子一人一人のまるごとのよさを見ていくか。つまり、「伸長」とは伸ばしていくということなので際限のない序列化にもつながりかねませんが、「尊重」というのはそれぞれのかけがえのなさを認めていくということで、そちらのほうが個を生かしていくということになっていくと思うんです。」(p.17-18)

日本においては、垂直的な序列化や水平的な画一化とか一斉画一は強まっているけれど、水平的な多様性が弱い。自力主義と同調圧力がゆえにそうなってきたと私は考える私は考えるわけですけど、(中略)日本社会において、社会全体としても学校としても水平的な多様性を意識的に作っていくことが、生きやすい社会にしていくうえで重要だという現所鵜認識があります。」(p.30)

「縦軸か横軸か」は、まさに前回アップした中根千枝氏の「タテ社会」と「ヨコ社会」に通じる観点で、「多様性を尊重する」「水平的な価値観」をもたらすという意味の縦軸がいよいよ重要になると思われます。

日本の学校はよい意味でも悪い意味でも「共同体としての学校」であって、そこでは個人を析出する点、自立した個を生み出す点において弱さがあったと思うのです。個を育てると追う点でも本丸はどこかとうと、水平的多様性であり、多様化をどう捉えどう進めていくか、この点が一番のポイントになってくるだろうと思います。(中略)生きやすい日本の学校、成熟した日本社会の在り方を展望する学校こそが、真に目ざすべき本来の意味での未来の学校であろうと思います。」(p.30-31)

石井英真氏は、2020年9月に『未来の学校 ポスト・コロナの公教育のリデザイン』(日本標準)を刊行しており、その第5章「「日本の学校」の新しい形へ」で、日本の公立学校が今後目指すべき姿について、「インクルーシブで真正な学び」というビジョンを提示しています。そのビジョンに「全面的同意!」というわけではありませんが、学校教育関係者には本号の座談会と共に、是非一読してほしいきめ細かい観点が示されています。

「学校教育に自動詞の拡大を」

内容の濃い新春座談会のあとに紹介するのは、相当勇気が必要なのですが、同じ『教育展望』1・2月合併号に、筆者が寄稿した「提言」が掲載されましたので、その画像を以下に添付します。

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