学校教育とSDGs

2020年9月19日

「流域治水」への参画とSDGs

荒川下流河川事務所での所内勉強会

9月17日に荒川下流河川事務所での所内勉強会で「SDGsが開く新しい時代」というタイトルで話題提供を行いました。その骨子については、これから何回かに分けて、考えを整理しながら書いていきたいと思っています。

最初に、荒川下流河川事務所での所内勉強会に招かれた経緯を紹介しておきます。荒川下流河川事務所の早川潤所長が、6月に開催された国際フォーラムで、諏訪が『学校3.0×SDGs』に掲載したSDGsの17目標の相互関連性を強調した図(下図)を用いたことを、第3者を介して連絡されてきました。

諏訪が『学校3.0×SDGs』に掲載した
SDGsの17目標の相互関連性を強調した図

そこには国際フォーラムで使用したPPTをPDF化した添付ファイルも付されていました。一方、諏訪の方はそのPPTに描かれていた河川法の3段階の進展に目が止まりました。『学校教育3.0』を刊行して以来、3段階の進展に対してすぐに反応してしまう癖がついていたからでしょう。

日本の河川法の3段階の進展
早川潤氏が国際フォーラムで発表したPPTより

しかしそのシートをよく見ると、1896年に制定された河川法は「洪水」対策に焦点が当てられていたが、1964年の改訂で「水利用」という視点が加わり、さらに1997年の改訂で「環境」保全という視点が加わるという3段階の進展があった、しかし、これからの河川行政ではさらに進展した「流域治水」という観点が不可欠で、そこで重要になってくるのが、SDGsで強調されている様々なステークホルダーの連携であり、「参画」と「統合」である、という指摘でした。


マルチステークホルダーのパートナーシップを伴う流域治水の理解
早川潤氏が国際フォーラムで発表したPPTより

「流域治水」をSDGsという枠組みで捉える早川所長の観点に惹かれるところがあり、お訪ねしてより詳しいお話を伺いたいと申し出たところ、逆に、「河川事務所に来てもらえるなら、所内勉強会でSDGsについての話をしてもらいたい」ということになった次第です。

これまでに依頼された講演等の対象者は、ほとんどが教育関係者でしたが、今回は治水の現場を背負っている方々で、話題提供後の質疑では、現場で直面している課題に関連したものが多く、十分な返答ができなかったと申し訳なく思っています。その分、教育関係者がこれからなすべき課題について多くのことを教えられました。

「流域治水」という現実の課題解決への参画と学び合い

今回どのようなことを教えられたのかを整理すると、以下のようなことです。

これからの治水事業を進めていくには、これまでの「流域関係者の理解・協力」というレベルから、「流域関係者の参画」という新たな展開が求められるようになっている。つまり事業者側が計画を策定し、その実施に対して関係者に理解・協力を仰ぐというこれまでの進め方では不十分で、経済・社会・環境・文化等々の様々な領域にわたる様々な関係者(ステークホルダー)の思いや懸念、知見が統合された「納得解」としての事業計画を策定し、遂行していく必要が生まれている。その「納得解」が導き出されるには、関係者が相互に学び合って理解を深め、そのような過程の中で新たなアイディアが誕生し、そのアイディアの具体化についても関係者とともに検討を重ねていく必要がある。なぜならば、本当に求められている事業を実施し、それが有効に機能するには、計画段階はもとより実施段階においても、事業終了後においても、関係者の「参画」が不可欠だからである。しかし、関係者間の学び合いの場の設定や進め方、さらに「納得解」に到達する道筋がまだ見えていない。また、そのような場を設定して学びを進める際の評価をどのようにすればよいのかも見えてこない。

当日の質疑応答を振り返ってみると、「学校教育や社会教育の世界では、すでに多くの実践に基づく蓄積があるであろう。ぜひ、その成果を自分たちに提供してほしい」という思いからの質問が多くを占めていたように感じています。それらの質問に十分に答えることができなかったことに対する「言い訳がましい」言い訳をすると、以下のようになります。

教育の世界でも、「学び合い」の歴史は浅く、課題解決型の学習も今急速に実践が増えているという状態です。学習者主体の学びを活発にさせるには、教師は従来の指導者という役割に加えてファシリテーターであることが求められる、と言われていますが、どのようなファシリテーションが有効であるかについても、未だ試行錯誤の段階と言えます。「評価」についても、学習者主体の学びでは自己評価が有効だとか、ルーブリック評価は使いやすいけど準備が大変だなどといわれていますが、これだという定説はないように感じています。「評価」という発想自身を否定する考え方もあり、そもそも定説が生まれるのかどうかも定かでありません。

とはいえ、教育界以外での「学び合い」が活発化するSDGs時代。かねてより教育に関わってきたものが、新しい教育方法の進展をしっかりとフォローし整理して、実際の課題に直面している方々の要望に少しでも応えることができるようにしなければ、と強く感じた意義深い所内勉強会でした。

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