活動報告

2021年8月1日

私の学習共同体論

基本のキーワード:異質との交流、共通目的の達成、オープンな世界、ソフトランディング、「Local educational supporting community」

 本稿は以下の3視点で論を展開します。

1.異学級・異学年との協働

2.学校外との交流(施設・人)

3.地域の学習共同体~Local educational supporting community(まちぐるみの子ども支援)

1.異学級・異学年との協働

現在の学校は言うまでもなく同じ年齢の子どもを集めて教育システムが存在します。小学校なら6段階の区分で教育が行われています。学級を基本とし日々その中で学習が進みます。

これからは、これだけではいけません。カリキュラムの大幅な改革も考えられますが、現状でも可能なことを考えることにします。まずやれることは隣の学級の子どもたちとの対話・交流を進めます。さらに異学年の学年の子どもたちとも協働することのできる場を設けます。

異なる知識、異なる思考、異なる学び方から多くの知見が得られます。年齢が同じということで区切られた学びの集団を広げてオープンな学びの世界を設定していくことが緊急課題です。

https://kyoiku.sho.jp/93436/
https://kyoiku.sho.jp/7092/

2.学校外との交流(施設・人)

いわずと知れた「社会に開かれた教育課程」の構築です。ここでのキーワードは連携と分担です。学校外の社会資本や文化資本、時には経済資本も巻き込んで連携を図るわけですが、やみくもにつながれば良いというものではありません。どこでどう連携して、どの部分を分担していくか、その際はある程度責任の所在もはっきりさせておかないといけません。そして、どの主体につながろうとも目的を共通にしておくことが肝要です。石川県教育委員会の実践事例集や文科省「社会教育士」資料は先行事例として参考になります。

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kyoiku/syougai/documents/tiikitogakkougarennkeikyoudousitazissennzireishuu.pdf
https://www.mext.go.jp/a_menu/01_l/08052911/what.html

3.地域の学習共同体~「Local educational supporting community」(以下、LESC)

上記1と2は現在のシステムを改良して学校教育を少しでも活性化する案です。いわばソフトランディングな手法です。しかし、もう少し踏み込んで考えると「学校」ならぬ「Local educational supporting community」(学習を進める地域共同体)ということに行きつきます。このLESCはややもするとその中でクローズドな世界をつくりがちですので、他のLESCとつながりあえるように初めからオープンなシステムを構築します。このLESCの構成要素は多様です。学校、PTA、塾、企業、公共施設、地域自治会、NPO等様々です。ここでも当然前述したように連携と分担を意図的・計画的に進めるのです。

すでに文科省のホームページには「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進」についての構想が載っています。その解説文は以下の通りです。「地域と学校の連携・協働を効果的、継続的に行うためには、学校運営協議会と地域学校協働本部、地域学校協働活動の一体的な推進が求められます。具体的には、地域と学校が、子どもたちの学びの充実のために、協議し、協働し、活動後の評価をして、また次の取組につなげていくというPDCAサイクルを回していくことが重要です。」

本稿のLESCはこれよりもより多くの多様性を求めたホールエリアの構想を意図したものであり、あらゆる人・こと・ものから学びを得ようとしているところに特徴を見出します。LESCをあえて和訳すると「まちぐるみの子ども支援」となりますでしょうか。そう遠くない将来に実現したいものです。

https://manabi-mirai.mext.go.jp/torikumi/chiiki-gakko/

(栗原 清)

2021年1月7日

この春卒業する小学生へ ―クリティカルシンキングでいきましょう―

批判的思考法をクリティカルシンキングといいます。「批判」を辞書で調べると「批評して判断すること。物事を判定・評価すること」とあります。しかし、批判というと「良し悪し、可否について論ずること。あげつらうこと」という意味もあり、何かの文句や不平不満を言っている悪い印象があります。「あの人は私の言うことに対していつも批判してくる」、「批判ばかり言ってないで代替案を示しなさい」などと使われます。この文章での「批判」は勿論前者です。クリティカルシンキングとは、物事や情報を無批判に受け入れるのではなく、多様な角度から検討し、論理的・客観的に理解することです。ものの見方・考え方の視点を転換させることです。

 例を示しましょう。歴史の授業で江戸時代の「享保の改革」は世の中をとてもよくした素晴らしい政治政策だったと習います。しかしそれは本当でしょうか。公事方御定書をはじめ新田開発の奨励や小石川養生所の開設、足高の制、目安箱の設置、相対済令、上米の制など積極的に世の中を改定し幕府財政の再建を図り一応の成功を収めました。 

 その中でも目安箱に注目します。徳川吉宗が政治を行う上での参考意見や社会事情の収集などを目的に、庶民の進言の投書を集めるために設置されて、投書は将軍自ら検分していた画期的な仕組みです。何段階もの階級社会であった当時、町民や農民が将軍本人に直訴ができたわけです。この制度は素晴らしいと大方の人々は喜びます。しかし、将軍と庶民の間にいる階級の人々にとっては幕府に対する要望や不満が続出されることで、将軍の意にそぐわないときはいつ辞めさせられるか気が気ではなかったと思います。立場という視点の転換で「享保の改革」ではなく「恐怖の改革」だったのではないでしょうか。

https://www.touken-world.jp/tips/44520/

クリティカルシンキングはもっと身近なところでも使えます。人の言ったことを安易にそのまま受けいれてはいけないということです。こういうとひねくれた人間になることを推奨しているようですがそうではありません。例えば、新宿から甲府まで電車でいくとします。普通に考えれば「中央線一本で行けますよ」となります。しかし、より安い料金で到達したいと考えると実は京王線で高尾まで行きそこから中央線に乗り換えた方が安く行けるのです。中央線一本で行く場合でも乗車券の買い方をどこかで区切ることで安くなることもあります。まさに時間の視点から料金の視点に転換すると同じ目的地への道でも様々に考えられるのです。正に「急がば回れ」の発想です。

 みなさんはこれからいろいろな経験を積んで生きていきます。その際、物事を判定し、評価していくことでしょうが、一つの見方・考え方で進んでいくと思わぬ落とし穴が待ち受けています。自分は信念を曲げないという人もいるでしょう。信念を持つことはよいことですが、どうか柔軟性を持って進んでいって欲しいです。そういう時にクリティカルシンキングを思い出し、縦からみていたものを横から見たり、立場を変えてみたり、考え方の視点を変えてみたりして充実した知性ある人生を歩んでください。

http://新宿駅から甲府駅の公共交通ルート – Yahoo!地図

2020年10月19日

北杜市と関係人口

「交流人口」とも違う「関係人口」

 「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。多くの地方都市では、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面しています。しかし他方で、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めています。地域外に住みながら、地域に度々やってくる「関係人口」は、地域づくりの担い手となることが期待されています。

https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/about/index.html

総務省や国土交通省は、関係人口の創出や拡大に向けて、様々な取り組みをしています。関係人口と地域との協働に取り組む地方公共団体のモデル事業への支援もその一つです。そして全国に向けた情報発信・情報共有により、こうした取り組みをさらに深化させています(参照:令和2年度関係人口創出・拡大事業)。

関係人口拡大は喫緊の課題であり避けて通れないテーマです。とは言っても国土交通省の資料によると、全国の地方都市は、関係人口拡大はまだまだ容易ではありません。なぜなら、地域との関わり度合いに応じて課題が異なるため、それぞれの段階に応じた対応の整理が必要だからです。

https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001352979.pdf

山梨県や北杜市と「関係人口」

人口減少や高齢化の進行が著しい山梨県においても「関係人口」を増やそうという努力が見られます。「ふるさと山梨に貢献したい」、「山梨に元気になってもらいたい」、「山梨をもっと知りたい」という想いを持っている、山梨県人会の会員や山梨県にゆかりのある都市在住者、あるいは山梨県ファンで年に何回もやってくる人々は少なくありません。そのような人々の想いを具現化するため、まずは、 地域とつながる機会・きっかけを提供することで「ふるさと未来投資家」になってもらい、 ふるさと納税をはじめとする多様な関わりで地域と継続的につながる仕組みを構築するといったものです(参照:“REBIRTH”「ふるさとやまなし」プロジェクト)。

そんな中、北杜市は幸い「地方回帰の動き(三大都市圏からの転入超過回数)」が高い数値を示しており、客観的にいって関係人口拡大に向けて良好な環境である都市だといえます。

https://www.mlit.go.jp/common/001256022.pdf

北杜市が更なる発展を求めた地域づくりを進めていくためには、地域の主体性を前提としつつも、外部アクターとの連携を強調する「新しい内発的発展」を実現していく必要があります。その外部アクターの一例として関係人口が想定され、意欲の高い地域住民と関係人口が共通の価値観でつながる新たなコミュニティを形成しつつ、連携・協働しながら地域づくりに取り組んでいくことが重要となるわけです。

北杜市民と関係人口が連携・協働するにあたっては、北杜市側が目指すべき方向性を明確化し、関係人口とどのように連携・協働していくのかについて、予め北杜市側で話し合いをしておくことが必要なのではないかと思います。

人口の減少、特に若年人口の減少は学校の統廃合などを引き起こしますが、逆に、地域の教育の魅力が向上すれば、その地域に子育て世代を呼び込むことにもつながります。地域の教育の魅力化と地域の活性化を重視している八ヶ岳SDGsスクールの活動に「関係人口」の拡大を意識したものを取り入れるといいのでなないでしょうか。

https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001352979.pdf

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